松浦総合研究所

奇妙な記述てんこ盛りの東大博士論文を執筆した人は奇妙だし、その奇妙な東大博士論文を審査し合格させた審査委員主査の東大教員も奇妙だし、その奇妙な東大博士論文を放置し続けている東大も、これまた奇妙。世の中奇妙なことだらけ。松浦晋二郎。東京大学文学部社会学科卒業。同志社大学法科大学院卒業。法務博士号取得。行政書士試験合格。連絡先:ivishfk31@gmail.com

千田有紀著・博士論文「『家』のメタ社会学」を読む(7)戦前、有賀喜左衛門は近代化によって伝統が失われることを嘆いていた?139頁

千田有紀は博士論文において次のように書いています:

 

・・・このようななかで、有賀喜左衛門の占める位置を評価するのは難しい。なぜなら確かに戦前、有賀は近代化によって伝統が失われることを嘆き、大家族や同族団体の「結合が弱められつつあるといわれている」し、「そうみられぬこともない」が、それでも「村落の生活を知るほどの者ならそれが簡単に日本の村落から消え失せるとは到底考えることはできない」(有賀[1943b→1966:121])と考えていたからである。(139頁)

 

しかし、上記で引用されている戦前の有賀の『有賀喜左衛門著作集Ⅰ』121頁の原文では、有賀は近代化によって伝統が失われることが嘆かわしい、とは一言たりとも述べていません。有賀は、大家族や同族団体の「結合が弱められつつあるといわれている」との言説に対して自己の学問的立場から客観的に反論しているだけです。

 この点についてもう少し詳しく見てみましょう。

 有賀は同書121頁で次のように書いています:

 

近代の急激な都市の発達によって大規模な軍隊、工場、会社やその他の社会施設の組織が新たに成立しつつあるから、おびただしい人口の新しい流入によってこのような同族結合に示される都市生活の古い一面は解体しているようにみえるが、新たに都市人口を構成するものは都市生活の新しい一面において、このような同族的結合を示すべき機会に恵まれるほどまだ都市生活になじまないからである。しかしこの人々とてほとんどすべては村落出身者であるから、必ずや同族結合への指向を潜在させているにちがいない。(引用終)

 

この引用部分においても有賀は近代化によって伝統が失われることが嘆かわしいとは一言も述べていません。有賀は「新たに都市人口を構成するもの」は同族的結合を示すべき機会に恵まれるほどまだ都市生活になじまないから「同族結合に示される都市生活の古い一面」が解体しているようにみえるのであって、「新たに都市人口を構成するもの」たちも「同族的結合を示すべき機会」に恵まれれば同族的結合を示すこともありうる、との趣旨を自己の学問的立場から客観的に説明しているに過ぎません。

 

以上のように千田の引用にかかる有賀の原文及び当該原文の前後の文脈を見る限り、戦前の有賀は近代化によって伝統が失われることが嘆かわしい、とは、全く、一言も、述べていなかったにもかかわらず、千田が、上記引用個所を根拠として、戦前の有賀は嘆いていた、と記述するのは事実に反しています。

 

このような千田の行為を、学者の世界ではなんと呼ぶのでしょうか?

またこのような行為は、千田のキャリアにどのような結果を招来するでしょうか?(

 

千田有紀著『女性学/男性学』(2009年、岩波書店)169頁において、千田氏は自分の大学院時代について次のように書いています。「大学院時代にお世話になった元指導教員の上野千鶴子先生。・・・『とくべつに指導はしない』と公言されている先生のもとで、本当に自由にやらせてもらいました。

 千田は何を「本当に自由に」やらせてもらったのでしょうか?

 

【注意:本記事は個人的見解・感想を述べたに過ぎず、特定個人または団体について特定の断定的・否定的評価を下し対世的に確定する趣旨ではありません。人によって物の見方、感じ方はさまざまです。】