松浦総合研究所

奇妙な記述てんこ盛りの東大博士論文を執筆した人は奇妙だし、その奇妙な東大博士論文を審査し合格させた審査委員主査の東大教員も奇妙だし、その奇妙な東大博士論文を放置し続けている東大も、これまた奇妙。世の中奇妙なことだらけ。松浦晋二郎。東京大学文学部社会学科卒業。同志社大学法科大学院卒業。法務博士号取得。行政書士試験合格。連絡先:ivishfk31@gmail.com

千田有紀著・博士論文「『家』のメタ社会学」を読む(17) 戦前の日本の「家」研究において、「家」というものが、制度、特に法制度と同一視された??千田博士論文117頁

千田有紀は博士論文において次のように書いています:

 

ここで、戦前の日本の「家」研究と戦後の家族研究に、ひとつの断絶が生じているのを見るのは、容易である。つまり、「家」というものが、制度、特に法制度と同一視されたため、戦後はそれが消滅したという前提から出発することになった。戦後における「家」の消滅が前提されているからこそ、戦後に「家」が見いだされていくことがぎゃくに驚きとなり、記述に値することになるのである。(千田博士論文117頁)

 

ここで千田は、戦前の日本の「家」研究において、「家」というものが、制度、特に法制度と同一視された旨、記述しています。

 

しかし、戦前、戸田貞三は「家」を「戸籍上の家」(=法制的家)と「事実上の家」とに概念上区別したうえで、「戸籍上の家は事実上の家族的共同とは異なるものである。」(注1)との理由から「戸籍上の家」を研究対象から除外し、自分が研究対象とするのは「事実上の家族」「事実上の家族的共同」のほうである、との趣旨を書いていました。

従って戦前の戸田は「家」を「法制度と同一視」してはいません。

この点は当ブログ過去記事でもすでに指摘したとおりです(注2)。

 戦前の日本の「家」研究に関する千田氏の上記記述は、事実に反しています。

 

【注】

(注1)戸田貞三『家族構成』(1937年版の1970年復刻版)137頁注5

(注2)千田有紀著・博士論文「『家』のメタ社会学」を読む(4)戸田にとって「家」とは、ただ単に戸籍に記入された形態に過ぎない?81頁