武蔵大学教授・千田有紀著『ヒューマニティーズ 女性学/男性学』(岩波書店)1頁には「大腸菌」と「ヒドラ」について次の記述があります(青字部分):
◎大腸菌は単性生殖をする生き物の仲間なので、同じ遺伝子情報をもつ個体を増やしていきます。
◎生殖に性をもちこむのは、多様性を確保するための戦略です。ヒドラは、普段は自分が増殖していく単性生殖をしますが、沼が干上がるなどの危機的状況に陥ると、雄と雌とに分化して、有性生殖をおこないます。
千田は「大腸菌」について「単性生殖をする生き物の仲間」であると書いていますが大腸菌は「無性生殖」を行いますので千田の上記記述は生物学的に間違いです。
また千田は「ヒドラ」について「普段は自分が増殖していく単性生殖をします」と書いています。
しかし「ヒドラ」は「普段」は「無性生殖」を行うので千田の「ヒドラ」に関する上記記述は生物学的に間違いです。
基本的に無性生殖を行う「ヒドラ」は、環境の急変などの危機的状況に陥った場合に例外的に有性生殖を行います。
「無性生殖」とは配偶子形成を伴わない生殖のことです。
「卵」「精子」を「配偶子」といいます。
これに対して「有性生殖」とは配偶子形成を伴う生殖をいいます。「単性生殖」(単為生殖、ともいいます)は有性生殖の一つとされます。
同書の中で千田は次のように書いています:
千田はこのように書いていますが、同書における、生物学的に間違った内容の上記記述を見る限り、科学が決して「客観的な事実」を伝えるものではない、というよりはむしろ、科学そのものは「客観的な事実」を千田に伝えているにもかかわらず、千田の側で客観的な科学的事実を正確に理解し記述する能力が備わっていないだけであるように、私には思われます。
千田はツイッターで次のように発言しています:
千田はこのように述べていますが、『女性学/男性学』における、生物学的に間違った内容の上記記述を見る限り、「緻密に論理で書いた 」文章とは正反対の、デタラメな記述です。
本書の「あとがき」で千田は、本書は高校生が読んでもわかるように書いた、と述べていますが、むしろ本書は高校生からも馬鹿にされ、笑われる、科学的に間違った記述がなされています。
科学的に間違った記述が日本社会に拡散していくことは看過できませんので、本記事では、上記のとおり間違いを指摘しました。
(参考文献)
数研出版『高等学校理科用 生物』
文英堂、シグマベスト『理解しやすい生物』(生物基礎収録版、2014年発行)
【注意:本記事は個人的見解・感想を述べたに過ぎず、特定個人について特定の断定的・否定的評価を下し対世的に確定する趣旨ではありません。人によって物の見方、感じ方はさまざまです。】