松浦総合研究所

奇妙な記述てんこ盛りの東大博士論文を執筆した人は奇妙だし、その奇妙な東大博士論文を審査し合格させた審査委員主査の東大教員も奇妙だし、その奇妙な東大博士論文を放置し続けている東大も、これまた奇妙。世の中奇妙なことだらけ。松浦晋二郎。東京大学文学部社会学科卒業。同志社大学法科大学院卒業。法務博士号取得。行政書士試験合格。連絡先:ivishfk31@gmail.com

千田有紀著・博士論文「『家』のメタ社会学」を読む(26)1963年の時点で森岡清美は「夫婦家族の普遍性」を主張した?128頁

千田有紀は博士論文128頁で次のように書いています:

 

我が国では、民法改正を強力なてことして、直系家族制度から夫婦家族制度へと変動しつつある。してみれば、夫婦家族制度への変化は、社会体制の差に拘らず早晩出現するところの、人類史的な展開を示すものと考えられる森岡[1963:31])。


この時点では、変化の原因は法改正であるとされている。また、夫婦家族の普遍性を主張するのは、マードック等の核家族の普遍性に関する欧米理論を思わせる。《引用終》

 

 

上記引用部分のうち青字部分は千田が『社会学』(福武直編、有信堂、1963年)から森岡執筆部分を引用(同書31頁)した部分です。

千田は1963年の時点で森岡が夫婦家族の普遍性を主張した旨、書いています。

しかし森岡自身は「夫婦家族は普遍である」とは書いていませんし森岡は上記引用部分の前に、アメリカと中国の夫婦家族の話を書いています。森岡はその記述を前提に上記引用部分のとおり日本が直系家族制度から夫婦家族制度へと変動しつつある事実を述べたあと、こうしたアメリカ、中国、日本の家族変動の傾向を踏まえて、「してみれば、夫婦家族制度への変化は、社会体制の差に拘らず早晩出現するところの、人類史的な展開を示すものと考えられる」と将来の世界的な家族変動を予測しているだけです。

従って千田の引用にかかる森岡の上記記述部分から1963年の時点で森岡が夫婦家族の普遍性を主張したとの千田の主張にかかる事実を認定することはできないと思われます。

 

ところが千田は、森岡が1963年時点で「夫婦家族の普遍性」を主張した、との上記記述を前提に、森岡は1963年時点において家族変動の「信念」を持っていた、と主張し、さらに1963年以降、森岡の「信念」が「トーンダウン」した、というストーリーを展開していきました。千田による当該ストーリーの問題点についてはすでにこちらの記事で指摘したとおりです。

 

 

【注意:本記事は個人的見解・感想を述べたに過ぎず、特定個人または団体について特定の断定的・否定的評価を下し対世的に確定する趣旨ではありません。人によって物の見方、感じ方はさまざまです。】