松浦総合研究所

奇妙な記述てんこ盛りの東大博士論文を執筆した人は奇妙だし、その奇妙な東大博士論文を審査し合格させた審査委員主査の東大教員も奇妙だし、その奇妙な東大博士論文を放置し続けている東大も、これまた奇妙。世の中奇妙なことだらけ。松浦晋二郎。東京大学文学部社会学科卒業。同志社大学法科大学院卒業。法務博士号取得。行政書士試験合格。連絡先:ivishfk31@gmail.com

なぜ被疑者が取調べにおいて非人間的な扱いを受けるのか。原因は刑訴法の条文にあった!

 

 

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 上記記事を読んだ。以下、コメントする。

 なぜ上記記事のように被疑者が取調べにおいて非人間的な扱いを受けるかというとそれは刑事訴訟法の条文に原因があるからである。たとえば刑事訴訟法259条では前半に「被疑者」という文言が規定された後、後半では「被疑者」が「これ」という「物」を指す代名詞で置き換えられている(*1)。すなわち刑事訴訟法上、被疑者は「人間」ではなく「これ」という「物」として規定されている(*2)。従って被疑者が取調べにおいて、非人間的な「物」扱いを受けたとしても、そもそも刑訴法が被疑者を「物」扱いしているのだからやむを得ない、ということになる。

 日本の刑事司法は「人質司法」などと批判されることがあるが、捜査機関側から見れば、刑事訴訟法259条が被疑者を「これ」=「物」として規定しているのだから条文に忠実に「これ」=「物」である被疑者を「物」として扱う「人質司法」のいったい何が問題なのか、という反論が可能であろう。

 取調べにおいて被疑者を「人間」扱いするには、刑事訴訟法259条の「これ」という文言を、たとえば、「この者」という「人間」を表す文言に変えて被疑者を「人間」扱いする条文に改正することから始めなければならない。この令和の時代になっても、いまなお、被疑者を「物」扱いする条文が刑事訴訟法に残っていることは、驚くほかない。日本の刑事司法が「中世」と呼ばれる所以である。

 

≪注≫

(*1)刑事訴訟法第259条
検察官は、事件につき公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨をこれに告げなければならない。
(*2)259条とは異なり、刑訴法261条では前半で「告訴人、告発人又は請求人」の文言を規定したのち、この文言を同条文中で繰り返すにあたり、後半でも、代名詞を使わずに、「告訴人、告発人又は請求人」という同一文言を再度規定している。つまり261条では条文の前半も後半も「告訴人、告発人又は請求人」という同一文言を規定することによって「人間」が規定されていることが読み取れる。この261条と対比すれば259条が前半で「被疑者」という文言を規定し、同条文の後半では「被疑者」という同一文言を再度規定せずに「これ」という「物」を指す代名詞を用いることによって「被疑者」を「告訴人、告発人又は請求人」と区別(差別)して取り扱う立法者の意図が推認できる。