《コメント》
近代立憲主義の前提には「国家権力に対する懐疑の精神」があり、憲法学者はそのような価値観あるいはメンタリティを共有し憲法を研究されてきたわけですが、上記ツイートを見る限り、石埼学教授は、そのような価値観なりメンタリティを放棄し、国家権力を全面的に信用する新しい憲法学を展開する、という方向性のようにみえます。
石埼氏はこのように述べています。
ところで自民党の憲法改正案は天賦人権を否定する内容の憲法改正案です。すると自民党の憲法改正案は、上記ツイートによれば「基本的人権の保障」という「日本国憲法の基本原理」を「変更するような憲法改正」ということになりますから、石埼氏は自民党の憲法改正案に反対の立場でなければおかしい、ということになります。
しかし私が石埼氏のツイートを見た限りでは石埼氏は自民党の憲法改正案に反対の意思を明確には示していないようです。
それどころか、石埼学氏は、「ぼたん」氏が行った自民党の生稲晃子議員を擁護するツイートを「リツイート」しています(次のツイートの赤線部分参照)。石埼氏のこの「リツイート」を見る限り、石埼学氏は自民党支持者であり、天賦人権を否定する内容の自民党の憲法改正案に賛成の立場であるような印象も受けます。
以上の事実関係からすると、石埼氏が天賦人権を否定する内容の自民党の憲法改正案に賛成かどうかは必ずしも明らかではありません。
しかし石埼氏は憲法改正賛成派であることは間違いありません。なぜなら石埼氏は憲法改正の具体的内容に関して次のように提言しているからです:
このように石埼氏は氏自身の具体的な憲法改正案を提言しているわけですが、しかし現在の政治状況で憲法改正に賛成すること自体が、結局のところ、天賦人権を否定する自民党の憲法改正案に基づいた憲法改正の実現に助力(幇助)してしまうことになりはしないのでしょうか?もしそうだとすると、憲法改正それ自体に反対しておくのが得策なのではないでしょうか。しかし石埼氏はこのような疑問や懸念には全く無頓着のように見受けられます。
【注意:本記事は個人的見解・感想を述べたに過ぎず、特定個人または団体について特定の断定的・否定的評価を下し対世的に確定する趣旨ではありません。人によって物の見方、感じ方はさまざまです。】
平裕介弁護士が社会学者牧野雅子氏論文を「研究者の倫理を逸脱する内容ではないか」と批判されました:
https://twitter.com/YusukeTaira/status/1563749629610856448
《松浦コメント》
私は、自宅にあった昭和40年発行『注釈刑法(4)各則(2)』(責任編集団藤重光、有斐閣)で該当頁を調べてみました。
すると同書298頁には(暴行脅迫の程度を問わないとする説は)「法的安定を損なう(特に女心の微妙さを考慮に入れよ。たとえば、東京地判昭35・12・22判タ117・111の事案参照)。些細な暴行・脅迫の前にたやすく屈する貞操の如きは本条によって保護されるに値しないというべきであろうか」と書かれていました。
「些細な暴行・脅迫の前にたやすく屈する貞操の如きは本条によって保護されるに値しないというべきであろうか」という注釈刑法の記述は、女性ジェンダー学者の癇に障る記述と思われます。